ビールの原料 大麦麦芽やホップ、酵母に水

突然ですが、ビールはどのように作られているのかご存じですか?

 

いつ飲んでもおいしいビール。最近では、大手ビールメーカーが販売するビールだけでなく、地方で製造されている「クラフトビール」など、さまざまなタイプのビールの種類を飲める機会が増えましたよね。

 

そんな中で「味の違いはさまざまだけど、ビールって全部同じ原料で製造されているのかな?」なんて思う人も少なくないでしょう。

 

そこで今回は、そもそもビールはどのような原料で製造されているのかについて徹底解説!いつも飲んでいるビールが、どんな原料で出来ているのか詳しくみていきましょう。この記事を読んだら、よりビールが好きになる!もっとビールが飲みたくなる!

 

それでは、ビールの原料を解明する旅へ出発です。

 

ビールの原料の種類

私たちが日頃飲んでいるビールの原料は、いくつか種類があります。実はこれ、日本と海外では違いがあるのをご存じでしょうか?

 

日本は、酒税法といわれる「お酒の製造方法や販売方法についてまとめた」法律が厳しく定められています。ビールの種類でいえば日本のビールは、この酒税法に乗っ取って製造されているため、海外のビールとは大きく差が生じるんですね。

 

それでは、日本と海外のビールの原料の種類を詳しくみていきましょう。

 

日本の原料の種類

日本のビールの原料は、主に麦芽・ホップ・水・酵母で構成されています。そのほかにも、ビールの味を調節したり、風味を変化させたりする「副原料」として、米・とうもろこし(コーン)・でんぷん(スターチ)・糖類等を使用することもあります。

 

同じスタイルのビールでも、味にさまざまな違いが生じるのは、使用する麦芽やホップが違ったり、水に含まれる成分が違ったりするため。もちろん、製造方法や副原料の含有量の違いによってビールの味わいは変化しますが、最も大きい違いを生み出すのは、ビールの原料である麦芽やホップ、水によるものなんですね。

 

私たちが普段飲んでいるビールも、原料のどんな違いによって味わいが変化しているのか、解き明かしてみるのも楽しそうです。 

 

また、日本のクラフトビールの原料は、ビールと同じ麦芽・ホップ・水に加えて、酵母によって構成されています。酵母とは、ビールを発酵してくれる微生物のこと。この酵母を原料として利用することで、クラフトビール特有の味わい深いビールが完成します。

 

酵母にもさまざまな種類があるため、原料である麦芽・ホップ・水と合わせて組み合わせることで、ビールの色や味わい、香りが決まっていくのです。まるで、一つひとつのビールが個性を持っているかのように感じられるでしょう。

 

海外の原料の種類

一方で、海外ではどのような原料を使用しているのでしょうか?ビールの歴史は古くヨーロッパを中心にビールは普及したものです。

 

実は、日本で製造されるビールと同じ、麦芽やホップ・水で構成されています。しかし、海外には日本のお酒の法律である「酒税法」が適用されないため、日本でビールに使用できないとされている原料も、原料として使用できます。

 

その原料として、例えばベルギーのビール「ヒューガルデン・ホワイト」にはオレンジピール、コリアンダーシードなどのスパイスを使用していたり、フルーツビールとして有名な「リーフマンス」にはさくらんぼ、フルーツジュースが使用されていたりと、日本ではビールの原料として含まれていないものが多く使用されています。

 

そのため、これらはビールの原料以外のものを使用しているとみなされ、日本では「発泡酒」と表記されてしまうのです。

 

日本のビールの法律「酒税法」によって、日本と海外ではビールにおける原料の定義が異なり、日本では「発泡酒」と表記され、海外では「ビール」と表記されているなんて、驚きですね。

 

麦芽とは

大麦

 

それでは、ビールの原料のひとつである「麦芽」について詳しくみていきましょう。

 

麦芽とは、もともとは「大麦」と呼ばれるイネ科の穀物のこと。ビールを製造する際には、この大麦を発芽させることで麦芽を作ります。これを「製麦」と呼び、ビールを製造するうえで大事な製造工程とされています。

 

麦芽

 

この製麦された大麦をさらに焙煎することで、麦芽として使用できるように。別名「モルト」とも呼ばれ、ビールの味や香りを決める大事な役割を担います。

 

日本では、この大麦を発芽させた「大麦麦芽」でビールを製造するのが一般的ですが、世界には、小麦麦芽やライ麦麦芽、さらには燻製したラオホ麦芽などを用いて、多種多様なビールが作られているんですよ。

 

最近では、日本のクラフトビール界でもこのような麦芽を用いてビールを製造するブリュワリーが多くなってきたので、ビール専門店やブリュワリーに足を運べば、多種多様な麦芽で製造されたビールに出会えるかも。

 

ホップとは

ホップ

 

次は、ビールの原料のひとつ「ホップ」について。

 

ホップと聞いて、みなさんは何を思い浮かべるでしょうか?緑色の植物?それとも、華やかな匂いがする植物…?

 

実は、どれも正解です。ホップとは、つる性の植物のこと。松かさに似たような形をしているのが特徴で、ビールを製造するうえで欠かせない原料です。ホップをビールに投入することで、ビール特有の苦みや香りをつけてくれます。

 

いわば、ビールの王様。ホップがなければ、ビールは完成しないと言っても過言ではありません。それくらいビールにおけるホップの存在は、かけがえのないものです。

 

さらにホップは、ビールの苦みや香りを付けてくれるだけでなく、ビールの泡持ちをよくしたり、殺菌効果を高めたりという働きもあります。まさに、ホップなくしてはビールが出来ないのです。

 

ビール酵母とは

酵母

 

続いては、ビール酵母についてご紹介しましょう。

 

先ほどお伝えした通り、ビール酵母とはビールを発酵してくれる微生物のこと。ビールの素である「麦汁」を「ビール」にしてくれる役割を果たします。ねっ、酵母ってビールに欠かせない原料でしょう?

 

酵母の役割は主に2つあり、1つは『麦汁に含まれるガスをアルコールと炭酸ガスに分解する役割」、そして『発酵の副産物として「エステル」という揮発性の香り成分を生み出す役割』を担っています。

 

この「エステル」という成分、あまり聞いたことがない人が多いでしょう。エステルとは、ビールを飲んだときに感じる、フルーティーで芳醇な香りのもととなるもの。そうです!

 

ビールの香りを生み出しているのは、麦芽とホップだけではなく、この「エステル」のおかげだったんです!そう考えると、ビールを生み出してくれている、ホップも麦芽も酵母のことも愛おしくなってきませんか?

 

原料に使う水

ビール造りでは、使用する水も大事なポイントです。

 

実は、これまでご紹介してきた麦芽やホップ、酵母よりも大きい割合を占めるのが「水」。ビールの全成分の約9割を「水」が占めているんです。麦芽やホップに注目してしまいがちなビールの原料ですが、この「水」こそが、ビールの行方を握っていると言ってもいいでしょう。

 

全成分の約9割を占めている「水」。この水の質がビールの品質を左右するため「いい水」を使用しなくてはなりません。では、どんな「水」がビールには適しているのでしょうか?

 

その答えは『無味・無臭で、濁りなどがなく、化学物質や微生物の混入がない、清浄な水』。(※1)大手ビールメーカーのサントリーでは、地下深くから汲み上げた良質な天然水をビール造りに使用しています。これは、一定の管理がしやすく、また物理的・化学的処理をしていないため。これにより、不必要な成分が加わる心配がなく、消費者が安心してビールを楽しめるのです。

 

また、水に含まれる「ミネラル」もビールの味や風味を決める大事な役割を担います。一般的には、ミネラル量が少ない「軟水」はラガービールに、ミネラル量が多い「硬水」はエールビールに適していると言われているそう。日本の大手ビールメーカーが手がけるビールに「ラガービール」が多いのも、日本の水が軟水だからなんですよ。

(※1)サントリーお客様センター「ビールづくりにはどのような水が適していますか?」より引用

 

副原料の種類

ここまで、ビールの原料について見てきました。麦芽やホップ、酵母、水の組み合わせにより、ビールの味わいが変化するということが分かりましたね。さて、ここからは、ビールの風味や味わいを調節する「副原料」についてご紹介しましょう。

 

副原料は、日本におけるビールの法律「酒税法」によって定められているものと、それ以外のものに分けられます。酒税法に定められている副原料でさえも使用する割合はしっかりと定められており、それ以上使用した場合は「発泡酒」に分類されてしまいます。日本でビールを製造する人々は、この酒税法に倣ってビールを製造しているんですね。

 

酒税法に定める副原料

では、日本における酒税法に定める副原料とは何か。

 

それは、主に米・コーン・スターチ・糖類があります。そのほかにも、こうりやん・ばれいしょ・着色料(カラメル)などが、日本で使用できる副原料です。

 

これら副原料を使用することで、ビールのまろやかさやスッキリさを調整し、バランスの良いものにしてくれます。ビールを製造するうえでは、原料と合わせて欠かせないものでしょう。

 

しかし日本では、副原料の使用量を、麦芽の重量の5%にしないといけないというルールが。海外では、さまざまな副原料を使用して、ビールの味わいを変化させるという手法がよく行われているのですが、日本で行った場合は「発泡酒」と表示しなければならないのです。ビールでありながら、ビールではなくなってしまうのですね…

 

その他の副原料

スパイス

 

そのほかの副原料として、さくらんぼやラズベリーなどの果実や、コリアンダーやオレンジピールなどのスパイスが挙げられます。

 

さらに、ビールに香りづけを行うコショウやシナモン、山椒などの香辛料や、レモングラスなどのハーブ、日本らしい出汁を表現する鰹節などがビールの副原料として使用でき、さまざまなビールが生み出されています。

 

クラフトビールでは、これらの副原料がよく使用されており、いつもと違ったビールを楽しめるでしょう。

 

酒税法は、これまで何度か改正されており、これら副原料がビールに使用できるようになったのは、ごく最近のこと。それまでは認められていなかった「果実、コリアンダー、香辛料、ハーブ、野菜、お茶、鰹節」が、酒税法改正によりビールの副原料として認められ、さまざまなビールが開発されるようになったのです。

 

今後、クラフトビールの人気が高まり、さらにビールの需要が見込まれた際には、酒税法改正によって、これまでビールとして認められなかった原料がビールに認められる日が来るかもしれませんね。

 

まとめ

いつもおいしいビールは、麦芽やホップ、酵母、水によって製造されていました。これらが組み合わさることで、さまざまな味わいを持つビールが生み出されていくのです。

 

いつも飲んでいるビールは、どんな副原料使用しているのか、その副原料を使用することでどのような味わいを生み出しているのか、考えることでビールの飲み方は楽しみ方が広がるでしょう。

 

最近では、クラフトビールの需要が高まり、さまざまなタイプのビールが作り出されています。今まで味わったことのないビールを探す旅に、出てみるのもいいかもしれません。きっと、驚くべきビールとの出会いが待っているでしょう。

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