【山形・酒田酒造】“上喜元”が生み出す、料理に寄り添う酒の完成形

山形県酒田市。
最上川が日本海へと流れ込むこの地に、
酒田の歴史とともに歩んできた酒蔵があります。
それが「酒田酒造」。
代表銘柄は──
「上喜元(じょうきげん)」
華やかさとバランスを兼ね備え、
食事とともに真価を発揮する日本酒です。
本記事では、醸造責任者・内藤大輔氏から伺った内容をもとに、
上喜元の酒造りの本質を深掘りしていきます。
目次
酒田の歴史が育てた酒
酒田酒造がある日和山地区は、
古くから栄えた港町。
最上川の河口に位置し、
豊かな食文化が育まれてきました。
かつてこの周辺には、
10軒以上の割烹料理店が並ぶ地区
が存在していたほど。
その環境の中で求められてきたのは、
料理を引き立てる酒
でした。
5つの蔵がひとつになって生まれた「上喜元」
酒田酒造の創業は昭和21年(1946年)。
- 男山
- 養老
- 藤屋
- 千里井
- 玉の川
5つの蔵が合併して誕生しました。
そして現在では、
酒田市街地に残る唯一の酒蔵
となっています。
歴史ある蔵と合理的な拠点分散

酒田酒造の蔵は、
歴史を感じる立派な梁が印象的な建物です。
ただし、昔ながらの敷地のため拡張が難しい。
そこで近隣に約900坪の敷地を確保し、
- 冷蔵保管
- 出荷
を担う施設を別に設置しています。
すべてを移転する選択肢もあった中で、
歴史と立地を残す決断
をしたことが、この蔵の姿勢を表しています。
東京農大出身・佐藤正一氏の酒造り
現社長・佐藤正一氏は、
東京農業大学醸造科出身の杜氏。
多様な酒造りに挑戦しながらも、
一貫しているのは
「食事とのバランス」
です。
華やかさだけではなく、
料理とともに成立する味わい。
それが上喜元の軸です。
若い蔵人たちが支える現場
酒造りは10月から6月末まで。
蔵は約23名のスタッフで運営されています。
朝8時半。
作業が一斉に始まり、
全員がきびきびと動く姿は印象的です。
若い蔵人も多く、
活気と技術が共存する現場
となっています。
自動洗米機が変えた品質の安定
酒造りの中でも重要な工程のひとつが洗米。
酒田酒造では、
自動洗米機を導入しています。
まるで洗車機のように、
- 米を投入
- 水を流す
- 風圧で水を切る
すべてが自動で行われます。
しかも、
人の手よりも糠がしっかり落ちる
という精度。
タンク内の水が濁らないレベルまで仕上がることで、
酒質の安定に大きく寄与しています。
麹づくりにおける“二刀流”

酒田酒造の特徴の一つが、
麹づくりの二刀流
です。
① 自動製麹機
- 衛生的
- 安定した品質
② 手作業(箱麹・蓋麹)
- 蔵内の微生物を取り込む
- 複雑な味わい
この2つを組み合わせることで、
上喜元らしいバランスと奥行き
を生み出しています。
4つの麹のうち1つに手作業麹を入れることで、
個性を付与する設計です。
「麹よりも原料処理が重要」という哲学
内藤氏の考えで印象的だったのが、
「麹づくりよりも原料処理が重要」
という言葉です。
- 精米
- 洗米
- 吸水率
この段階での精度が、
- 雑菌のリスク
- 醪の強さ
を決定づける。
つまり、
すべては最初の工程で決まる
という考えです。
多様な米と徹底した管理
酒田酒造では、
26種類の酒米を使用しています。
- 山田錦(麹米中心)
- 各地の酒米
- 新品種
さらに、
自社精米機を活用し、
原料から一貫管理
を行っています。
発酵と搾りのこだわり

- 醪期間:約30日
- 搾り:ヤブタ式
さらに、
- ガス感を残す設計
- ポンプやタンクへのこだわり
細部まで品質を追求しています。
酒母・酵母の多様性
- 速醸:2種類
- 生酛:6種類
- 自社酵母も使用
この組み合わせにより、
多彩な味わいを生み出しています。
瓶詰・貯蔵・品質管理
搾った酒はサーマルタンクへ。
- 瓶詰
- 火入れ
- 打栓時に空気を抜く
酸化を防ぐ工夫が徹底されています。
さらに、
発酵中の酒質チェックも継続的に実施。
山本屋酒商店としての評価
上喜元は、
“ちょうどいい酒”の完成形
です。
・香りは出すが出すぎない
・味はあるが重くない
・食事に自然に寄り添う
このバランスが非常に優れています。
まとめ|技術と感性のバランスが生む酒
酒田酒造の酒は、
- 技術
- 経験
- 感性
この3つが高いレベルで融合した酒です。
そして何より、
料理とともに完成する酒
です。
だからこそ、
飲み手の「気分」を上げてくれる。
それが「上喜元」という名前の由来にも通じています。

