ワインは醸造酒ですが、ワインの作り方といっても、白、赤、ロゼ、スパークリングとそれぞれ製造工程は違います。今回は白ワインの醸造法について説明しますね。
一口に白ワインの作り方といっても、実は各ワイナリーによって様々です。このページでは、白ワインの作り方の基本をお伝えしますね。その基本に沿ってワイナリーが味わいを追求する中で試行錯誤しながら、工程をアレンジしていると考えてもらうといいでしょう。
白ワインの製造工程
ブドウの選別
まず原料となるブドウを収穫していきます。地域によって収穫時期は多少異なりますが、多くは9月ごろに収穫が始まります。
原料として1番有名な品種はシャルドネという白ブドウですが、実際に原料として使用されているブドウの品種はなんと5000種類以上もあるのです。
収穫方法は手摘みか機械摘みがあり、多くのブドウを短時間で収穫できる機械摘みに対して、手摘みは時間がかかる一方でブドウを痛めにくいというメリットがあります。
収穫後は選別作業に入りますが、ここでは腐敗したものや実が熟していないもの、傷のある実を除外していきます。
収穫時に手摘みであればその場で選別し、さらにベルトコンベアなどを使用して徹底的に不必要な実を抜いていくのです。
除梗(じょこう)
除梗とは、ブドウの梗(こう)を取り除く作業のことです。
梗(こう)とは葡萄の実が付いている短めで固めの枝・茎のことで、葡萄の実をその枝から取ってバラバラにします。
この除梗作業は白ワインの醸造の場合、産地やワイナリーによって行う場合・行わない場合があります。
昔のワイン造りは、除梗という概念がなく、梗も一緒に果汁につける全房発酵が主流でした。
この全房発酵は梗を取り除いて果汁に漬け込む除梗とは正反対の工程であり、どちらを選択するかで味わいが大きく変わります。
ほどなくして除梗機が誕生しますが、性能がイマイチで除梗の過程で実を潰したり傷つけてしまうこともあったようです。
しかし1950年ごろから除梗機の性能が向上し、全房発酵ではなく除梗という工程を取り入れるワイナリーも増えてきました。
破砕
破砕は、ブドウの果汁を搾りやすくする為に果皮を傷つけ破ります。
除梗(枝取り)と破砕は機械作業で同時に行われることが多いです。
圧搾
除梗破砕の工程が終わると、果皮が破け少し果肉が出た状態のブドウから自然と果汁が出てきます。これは果肉や果皮の自重によって出てくるものでフリーランジュースと呼ばれます。
フリーランジュースの抽出が終わると、これから抽出される果汁とは別の容器で保存されます。そして圧搾の工程に移るのですが、圧搾とは圧搾機を使ってブドウをプレスし、さらに果汁を絞り出す工程を言います。
白ワインの場合は色を抽出する作業(醸し)は必要ありませんが、キレイな色合いにするために、圧搾後に濁った果汁を少し置いて、浮遊物や固形物などを沈殿させ取り除く作業(デブルバージュ)を行うことがあります。
古くは人の手や足を使って行われていた圧搾ですが、現在は一度に大量のブドウから果汁を搾り取ることのできる圧搾機を使用してワイン造りが行われています。
そんな圧搾機ですが、実は古代ギリシャ人たちが今の圧搾機の土台を作ったと言われているほど非常に長い歴史を持っています。
現代では大きく分けて以下の3種類の圧搾機が主流です。
垂直式圧搾
全ての圧搾機の原型となっている垂直式は、大きなカゴにブドウを入れて蓋をし、その蓋ごと上から下の方向に圧力を加えて果汁を搾り取るシンプルな作りの圧搾機です。
今から約1000年前に垂直式が考案され、基本設計は今でもほとんど変わっていません。時間をかけて絞り出すことから、繊細で上品な果汁が抽出されます。
水平式圧搾
基本的な設計は垂直式と変わりませんが、異なる点としてはカゴを水平に設置し、両端から圧力をかけて果汁を絞り出すという点です。垂直式よりも一度に多くの量を抽出できるというメリットがあります。
空気圧式圧搾
空気圧式の構造は、円柱型のカゴの中に空気で膨らむ大きな風船が設置されており、その風船が膨らむことで搾汁を行います。一度に搾汁できる量は少ないのですが、ブドウに余分な圧力が加わらず非常にキメの細かい果汁が抽出できるというメリットがあります。
これらの圧搾機によって抽出された果汁は、プレスジュースと呼ばれ、フリーランジュースとは別に保存され発酵されます。
発酵
白ワインは果汁だけを発酵させます。果汁に酵母を加えると果汁の糖分が分解され、アルコールと二酸化炭素(炭酸ガス)を発生します。アルコール発酵についてはこちらに詳しく掲載しています。
果汁の糖分が無くなると発酵は自然に止まりますが、糖分が全てアルコールに変わると辛口のワインとなり、糖分が残った状態で発酵をやめると甘口のワインができます。
酵母は培養酵母を添加する場合、自然酵母(自然に存在し勝手に発酵する)を使う2種類の場合があります。
発酵にはステンレスタンクや木樽など様々な素材のものがワインにより使用されます。
白ワインの発酵温度は上がり過ぎないように管理され、15度から20度程度と赤ワインより低くく設定されます。それにより白ワインのフレッシュ感を保っています。
滓引き
アルコール発酵が終わると役目を終えた酵母や果肉片などが沈殿します。その沈殿物(滓)を取り除きます。
基本的にタンクには上澄みワインを出す上部バルブと滓を排除する下部バルブが付いています。滓は容器下から抜く方法や、上澄みを取る方法など手法は様々です。
この滓を取り除く作業を滓引きと言い、クリアで綺麗な白ワインを作る上で重要な工程となります。
マロラクティック発酵
乳酸菌の働きで、ワインの中のリンゴ酸を乳酸と炭酸ガスに分解し発酵することで、ワインの酸味を和らげます。
リンゴ酸は尖った酸味を感じるので、乳酸に変化させることで味わいがまろやかになります。また乳酸だけでなく、化合物も生まれることでバターやチーズ、ナッツのような香りも生まれ、香りに複雑さが増します。
マロラクティック発酵は赤ワインの醸造ではほとんど行われますが、白ワインでは複雑な味わいを作りたい時に活用し酸味のフレッシュ感を活かす白ワインでは行いません。
ブレンド
ブレンドとは、複数のブドウ品種を使ったワインを混ぜ合わせることです。マロラクティック発酵と同じく、全てのワイナリーが行うわけではありませんが、異なる品種のブドウを使ったワインを混ぜ合わせます。
複雑な味わいを生み出すために行う場合があります。例えば主体で使うブドウに香りや重さが足りない場合は、それを補えるブドウ品種をブレンドすれば、生産者が造りたい味わいやスタイルのワインを造りだせるんですね。
ワイン造りに歴史があるフランスやドイツなどの旧世界と呼ばれる国々では、ブレンドワインが主流ですが、それに対して日本やチリなどを含む新世界と呼ばれる国々ではブレンドをしない単一ワインが主流となっています。
理由として旧世界ワインは古くからの教えでブレンドワインのノウハウがありますが、新世界ワインはまだ歴史が浅く、ブレンドの調合比率などを模索している段階だからと言われています。
熟成
熟成の容器は、タンクまたは木樽で熟成します。
果実味を活かしたフレッシュなワインを造りたい場合はタンク、複雑味のある風味豊かな味わいのワインを造りたい場合は木樽で熟成させます。
期間は生産者やワインにより様々ですが、地域によっては熟成期間が決められているものもあります。
一般的に赤ワインは熟成に適しており、白ワインは熟成に適していないと言われていますが、高級白ワインの一部では熟成を必要とするものもあります。
例えばフランスのボルドーソーテルヌの高級貴腐ワインであれば、100年以上の熟成が可能なので製造年と100年熟した貴腐ワインの味わいや香りは全くの別物になっているでしょう。
ですがこのような例外を除くと白ワインで熟成をさせるということはほとんどありません。
清澄・濾過
清澄とは、清澄剤を使用してワインの透明度を上げる工程のことを言います。
清澄剤にはゼラチンや卵白が使用され、ワインに含まれている微小な固形物をまとめて大きな固形物へと変化させることによって濾過作業の際に取り除きやすくします。
ワインに含まれるブドウの成分や酵母の残りはフィルターにかからないほど微小なものであったとしてもワインを濁らせてしまうこともあります。濁りを減らすためにも清澄作業は白ワイン造りで重要な工程なのです。
清澄が終わると、ワインをフィルターにかけて濾過し、清澄で固まったブドウの成分や酵母を取り除く工程に移ります。
この濾過作業は全てのワイナリーが行っているわけではなく、無濾過といってあえてブドウの成分や酵母を取り除かずに多少の濁りがある状態で出荷される場合もあります。
瓶詰め
清澄濾過作業が終わると瓶詰め作業に入りますが、ワインは繊細な飲み物で、不純物が入ってしまうと一気に味わいが変化してしまいます。
そうならないためにも、ワインを入れる瓶はしっかりと洗浄し乾燥したのちに瓶詰め作業を行わなければなりません。
ワインを瓶に注入する際にも、飛沫をあげて適当に入れるのでなく少しずつ丁寧に入れていきます。
瓶詰め作業もワイン造りの過程で非常に重要な工程であり、ワインの味わいを決める工程であると言えます。
そうして瓶詰めされたワインはラベリングされて出荷されていきます。