高千穂町は、国の名勝・天然記念物に指定されている高千穂峡に代表されているように、今も豊かな自然が残る地です。平地の標高は約350m。夏は涼しく、冬は九州内でも寒さが最も厳しく、毎朝氷点下の日が続くこともあります。秋から初冬(9月中旬~11月下旬)の冷え込んだ朝には高千穂盆地に雲海が立ち込め、国見ヶ丘から神々しい風景を見ることもできます。高千穂酒造の本社はその国見ヶ丘のふもとにあります。周りを森林に囲まれ、美しい空気と清流のせせらぎが静かに響くこの地は、麹づくりや発酵、蒸留、熟成などにふさわしく、まさに本格焼酎づくりには最適な場所といえます。
昔から焼酎づくりは、一麹(いちこうじ=製麹)、二元(にもと=一次仕込み)、三造り(さんつくり=二次仕込み)が重要といわれ、その中でも、「製麹(せいきく)」は一番に挙げられるほど、酒質を左右します。また酵母は生き物であるため、気温などその時々の環境によって動きや泡の沸き出し方まで違ってくるのです。微生物が放つサインを見のがさず、うまく管理しながら理想の味へと仕上げていく。長年の経験と、熟練した技が求められる繊細な作業です。
本格焼酎の原酒のアルコール分は約40度。25度・20度で出荷するためには、出来上がった原酒を水で割ってアルコール度数を調整する必要があります。市販されている焼酎の約半分を構成するのが水。水にこだわらなければ、本当によい焼酎はつくれません。高千穂酒造の原酒の味を損なわない水、品質を落とさない水、より焼酎の味を引き出してくれる水にこだわり旧白水村(現:南阿蘇村)白川水源の天然水が使われています。
焼酎を蒸留したときに最初に出てくる原酒を、初垂れ(はなたれ)、初留取り(しょりゅうどり)といいます。焼酎本来の旨味と風味が凝縮された極上の原酒は、ほんのわずか1%程しか取れない貴重な一滴。独特の個性を持っているため、その希少価値を知る焼酎通な方に愛飲されてきました。華々しい香り、濃厚な味でアルコール度は六〇度ほどあります。