香住鶴とは|生酛・山廃が生み出す“複雑な旨味”を追求する酒蔵

香住鶴玄関

兵庫県北部、日本海に面した香美町香住地区。

冬には松葉ガニ、香住ガニで知られるこの地域に、全国でも珍しい「全量生酛・山廃造り」を行う酒蔵があります。

それが、香住鶴(かすみつる)です。

近年、日本酒業界ではジューシーで甘みのある酒質が人気を集めています。

そんな時代の中で香住鶴は、あえて逆を行くように、

👉 “複雑で、飲み飽きしない味わい”

を追求し続けています。

今回は実際に酒蔵を訪問し、福本和広社長から直接お話を伺いました。

そこには、流行ではなく「熟成と複雑性」を信じる、強い酒造りの哲学がありました。


日本海の町・香住で生まれる酒

香住鶴井戸

香住鶴の酒蔵は、兵庫県香美町香住区にあります。

日本海に面したこの地域は、香住ガニ(紅ズワイガニ)でも有名な港町です。

現在の酒蔵は、約20数年前に海沿いから山手へ移転しました。

理由は明確でした。

👉 より理想的な水と酒造りの環境を求めたからです。

現在の蔵は、鮎が生息するほど清らかな矢田川の前にあります。

さらに驚いたのは水へのこだわりです。

当初は複数の井戸を掘って酒造りをしていましたが、さらに理想の酒質を追求した結果、

👉 地下100mの水

こそが香住鶴の目指す味に最も適していたそうです。

現在では、その深層水を使って酒造りを行っています。上記の画像です。


東京農大から蔵へ戻り、すべてを生酛・山廃へ

現在の社長は、福本和広社長。

東京農業大学を卒業後、福島県の末廣酒造で3年間修行し、香住へ戻りました。

そして蔵に戻って最初に行った大きな決断。

それが、

👉 全量を生酛・山廃造りへ切り替えること

でした。

もともと先代時代から生酛・山廃には力を入れていましたが、速醸酛も一部使用していました。

しかし福本社長は、速醸酛を完全に廃止。

現在の香住鶴は、すべて生酛・山廃造りです。

理由を尋ねると、社長は何度もこう話されていました。

👉 「複雑な味わいにしたかった」

この言葉が、今回の訪問で最も印象に残った言葉でした。


清潔で合理的な蔵

香住鶴の酒米

香住鶴の製造期間は、9月から翌年4月末まで。

使用する酒米は兵庫県産にこだわり、特に蔵のある兵庫県北部地域の米を中心に使っています。

山田錦
五百万石
兵庫北錦

など、地元の米を中心に酒造りを行っています。

蒸米施設

蔵に入ってまず感じたのは、

👉 とにかく清潔

ということでした。

洗米、浸漬、蒸米、冷却。

すべての導線がシンプルかつ効率的に整理され、2階フロアに作業が集約されています。

香住鶴麹室

麹室は2部屋。

大吟醸用と通常酒用に分かれています。

特に印象的だったのが「床用製麹機」。

蒸米の温度や水分を自動制御できる設備で、福本社長は

👉 「できるだけ水分を取り、軽い麹にしたい」

と話されていました。

この細かな調整も、香住鶴らしい複雑な味わいへ繋がっています。


香住鶴の真骨頂「生酛・山廃」

香住鶴乳酸菌部屋

香住鶴の酒造りで最も特徴的なのが、酛(もと)造りです。

酵母用の10℃部屋。

乳酸菌育成用の5℃部屋。

さらに乳酸菌が育ちやすいよう、壁には杉板が貼られています。

ここで、生酛・山廃造りの酒母が育てられます。

その後、三段仕込みへ。

約25〜26日という長い時間をかけ、ゆっくりともろみを発酵させます。

この時間の積み重ねこそが、

👉 香住鶴の“複雑性”

を作っているのです。


熟成でさらに深まる味わい

香住鶴圧搾機

搾りにはヤブタ式圧搾機を使用。当日は、休蔵なのでビニールシートで覆われています。

その後、商品によって貯蔵方法を分けます。

フレッシュ感を出したい商品は瓶貯蔵。

一方で、生酛・山廃らしい複雑味を引き出したい酒はタンク貯蔵で熟成されます。

驚いたのは、

👉 レギュラー酒でも3年程度寝かせるものがある

ということ。

さらに炭素濾過も極力抑えています。

理由は、

👉 「炭素を入れすぎると味が薄くなるから」

香住鶴は、透明感よりも“味の奥行き”を選んでいるのです。


ワインのように熟成を検証する蔵

香住鶴熟成蔵

旧蔵には熟成管理用の部屋もありました。

そこでは実際の商品を数本ずつ長期保管し、熟成変化を研究しています。

まるでワインセラーのような空間でした。

福本社長は、

👉 「寝かせることで出る複雑さ」

を非常に大切にしています。

日本酒でありながら、どこかワイン的な思想も感じる蔵です。


最後に社長が話したこと

最後に福本社長は、こう話されていました。

「最近のジューシーなお酒とは、一線を画したい」

「甘い酒から日本酒を好きになった人が、最後に戻ってくる酒を目指したい」

その言葉通り、香住鶴は“流行を追う酒”ではありません。

時間をかけて理解される酒。

飲み続けるほどに深みが見えてくる酒。

それが香住鶴です。


香住鶴はこんな人におすすめ

✔ 生酛・山廃が好き
✔ 食中酒が好き
✔ 燗酒を楽しみたい
✔ ワインのような複雑性が好き
✔ 飲み飽きしない酒を探している

そんな方に、ぜひ一度味わっていただきたい酒蔵です。


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