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知覧が育んだ103年の軌跡

大正8年(1919年)に創業した知覧醸造は、薩摩の小京都として知られる南九州市知覧町で、一世紀以上にわたり焼酎造りを守り続けています。

国の重要伝統的建造物保存地域に指定された「知覧武家屋敷群」や、特攻隊の貴重な遺品資料が展示されている「知覧平和会館」など、歴史的遺産に囲まれた土地で、代々伝統の技を継承してきました。

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美しい稜線を描く開聞岳の麓に広がる平地には、特産のお茶畑やさつまいも畑が連なり、豊かな自然と歴史が調和した環境で酒造りが行われています。

現在の社長である森暢氏は、先代の娘婿として知覧醸造に入り、社長兼杜氏として手腕を発揮しています。奥様と社員2名、そしてパートの方々と共に蔵を切り盛りする森氏の下、「機械で造るな、五感で造れ」という先代の教えを守り続けています。

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この哲学は、三角棚での麹造りなど、昔ながらの製法を大切にする姿勢となって表れています。

現在の蔵は、かつての中学校跡地に移転し、先代が設計した効率的な動線を持つ製造場で、伝統の技と現代の知恵が融合した焼酎造りが行われています。

広々とした敷地を活かした製造場のレイアウトは、先代の慧眼によるもので、森氏は日々の製造作業のしやすさに感謝の念を抱いています。新しい蔵では、伝統的な製法を守りながらも、効率的な製造環境を実現し、品質の向上に寄与しています。

さつまいもとお茶の王国

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知覧醸造の大きな特徴は、日本一のさつまいも生産量を誇る南九州市の採れたて芋を使用できることです。美しい稜線を描く開聞岳の麓に広がる豊かな大地で育った芋は、その日のうちに仕込みに使用され、鮮度の高い原料で焼酎造りが行われています。

この地の利を活かした原料調達は、知覧醸造の焼酎の品質を支える重要な要素となっています。

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さらに特筆すべきは、森氏が60町歩(約60ヘクタール)という広大な茶畑も経営していることです。東京ドーム約12個分に相当するこの茶畑では、13の茶農家による組合の一員として、お茶の製造から大麦若葉の加工まで手掛けています。

南九州市は市町村単位では日本一のお茶の生産量を誇り、その豊かな農業資源が知覧醸造の独創的な商品開発の基盤となっています。

組合での活動は、設備投資の効率化や技術の共有など、様々な面でシナジー効果を生み出しています。お茶の製造技術は、後の「知覧Tea酎」開発にも大きく貢献することとなりました。

また、大麦若葉の加工も手掛けることで、農業経営の多角化も実現しています。目の前に広がる茶畑は、訪れる人々に南九州市の農業の豊かさを実感させる壮大な景観を形成しています。

Tea酎が切り拓く新たな地平

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知覧醸造の革新性を象徴するのが「知覧Tea酎」の開発です。東京の飲食店でのお茶割りとの出会いをきっかけに、森氏は独自の製法開発に着手しました。

当初は、武家屋敷を取り扱う飲食店に作り方を広めていきましたが、東京で体験した味わいの再現に苦心します。試行錯誤の末、使用する茶葉の品質が決定的に重要であることに気づき、自社の茶畑で栽培する茶葉を活用した製法の開発に取り組みました。

その結果、2次もろみに地元産の「黄金千貫」と「知覧茶一番茶葉」を同時に仕込む独自の製法を確立。しかし、完成当初は知り合いの酒販店からの評価は芳しくありませんでした。

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それでも森氏は諦めることなく営業活動を続け、その努力は2021年のKura Master本格焼酎・泡盛コンクールで芋焼酎部門プラチナ賞、さらには審査員賞とプレジデント賞という栄誉ある評価という形で実を結びました。

この受賞を機に、知覧Tea酎は日本料理店や健康志向の方々、さらには海外からも高い支持を得るようになります。

特に炭酸割りでの提供が好評を博し、新たに開発された「ほうじ茶」バージョンも、お湯割りでの提供を想定した商品として人気を集めています。

土地の物語を紡ぐ焼酎たち

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知覧醸造の商品群は、地域の歴史と文化を映し出す鏡のようです。定番の「知覧屋敷」は白麹による伝統的な芋焼酎として、蔵の基礎を形成しています。

黒麹仕込みの「ちらんほたる」は、故・高倉健主演の映画「ほたる」に描かれた知覧特攻基地の若者たちへの想いを込めた逸品です。その命名には、特攻で散った若者たちがホタルとなって故郷に帰ってきたという印象的なシーンへの敬意が込められています。

さらに、新商品の「ちらんちらん」は、地元産のハマコマチ芋を使用し、紅茶の香りを纏った革新的な焼酎として注目を集めています。炭酸割りやお湯割りなど、様々な飲み方で楽しめる新しい味わいを提案しています。

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これらの商品開発には、南九州市の豊かな農産物と深い歴史、そして地域文化への深い理解が反映されています。

全ての製品に使用される割り水には、ミネラル豊富な地下天然水を使用し、知覧の自然の恵みを余すことなく活かしています。

森氏の情熱と創造性は、伝統を守りながらも新しい価値を生み出し続け、知覧醸造の焼酎は、この土地の物語を雄弁に語り続けています。

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知覧醸造の会社概要

会社名知覧醸造株式会社
代表者森 暢
代表銘柄武家屋敷、知覧Tea酎、ちらんちらん、ちらんほたる
創業大正8年(1919年)
住所鹿児島県南九州市知覧町塩屋24475
電話0993-85-3980
ウエブサイトhttps://chiranjozo.co.jp/

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